2025年度の運送業の人手不足を要因とする倒産は55件

「運送業の人手不足倒産が増えている。」
こんなニュースを聞いたことがある方は多いかもしれません。道路貨物運送業について、2025年度の道路貨物運送業の倒産は321件、そのうち人手不足を要因とする倒産は55件でした。全体の17.1%を占めていることになります。(帝国データバンク)
しかし、このニュースを聞いたとき、違和感がありませんでしたか?
「どうして人手不足で倒産するの?
人手不足なら、売り上げも減るけど、経費も減るはずだから倒産するのはおかしいんじゃない?」
その疑問はもっともだと思います。
しかし、ちゃんとした理由があります。
会社の倒産って、大変なことなんですよ。
皆さん倒産したいと思って事業をされている社長さんもいないと思いますし、今いる会社が倒産すればいいのにと思っている従業員の方もそんなに多くはないと思います。
なのに、その願いむなしく倒産してしまう。それはどうしてなのか。
この記事では、10年以上運送会社のコンサルタントをしていて、多くの運送会社さんから見てきた筆者が解説します。
理由① 売上が人に依存している
トラックは、ドライバーさんがいないと走りません。つまり、人がいないと売上が立たないことになります。
たとえば、ドライバー10人の会社を考えると分かりやすいです。
10人 × 1日5万円の売上 = 1日50万円
だったところから2人辞めると、
8人 × 5万円 = 40万円
になります。売上は20%落ちます。
理由② 固定費が大きい
運送業って固定費が結構かかるんですよね。トラックのリース・ローン、車庫、事務員、システム、保険、税金などがあげられます。
トラックの値上がり

象徴的なのが大型ウイング車です。中古トラック大手のヨシノ自動車によると、日野の大型ウイング車は2020年から2025年の約5年間で500万〜600万円ほど上昇し、以前1,400万円程度だったクラスが、現在は1,900万〜2,000万円程度になっているケースがあるとしています。三菱ふそうでも短期間に200万円近く上昇した例があるとのことです。
トラックの修理代も値上がり 思いのほか収益を圧迫する要因
そして、トラックの修理代というのも考えている以上に発生します。
トラックの修理・整備費も上昇傾向です。 運送会社にとっては、車両価格の上昇以上に「じわじわ効いてくるコスト」だと思います。
そして、その修理代金も上がっているのです。増加要因として、部品・材料費の上昇と、整備工賃への価格転嫁が明確にあります。整備士の平均年収も前年比4.0%増えているそうです。
トラック関連部品の値上げについては、たとえばトレーラーなどを製造する東邦車輛は、純正部品を2025年6月に平均10%値上げし、さらに2026年5月にも平均5%程度値上げしています。理由は鋼材・アルミなどの原材料、人件費、円安による輸入部品、物流費の上昇です。
さらに今のトラックは、故障したときの一撃が大きいのです。三菱ふそうが示している大型トラックの例では、
- インジェクター交換:約60万円
- エンジン交換:約700万円
という修理費の例があります。もちろん故障内容・車種によって大きく違いますが、「大型トラックは大きな故障が1回出るだけで数十万~数百万円」という世界です。
そして、最近のトラックでは排ガス処理装置、各種センサー、ECU、安全運転支援装置などが増えています。そのため昔のような単純な機械修理だけではなく、電子制御系の診断や部品交換も必要になっています。
そして、トラックを修理に出している間、当然そのトラックが走るはずだった売上もたちません。ダブルパンチということになります。
理由③ 人手不足が一旦始まると悪循環が始まる
一旦ドライバーさんが一人退職すると、
ドライバー退職
→ 運べる荷物が減る
→ 売上減少
→ 残ったドライバーに負担集中
→ 残業・休日出勤が増える
→ さらに退職
→ 採用のため給与を上げる
→ 人件費増加
→ 利益がなくなる
→ 倒産
という悪循環になってしまいます。
さらに2024年4月からドライバーにも年間960時間の時間外労働上限が適用されています。そのため、「人が足りないなら残っている人にもっと走ってもらえばいい」という方法にも限界があります。
理由④ すぐにドライバーを増やせない

「配送ドライバーって車を運転できれば、誰にでもすぐできる仕事でしょ?」
と思うかもしれません。しかし、配送ドライバー業というのはある程度の習熟が必要な業務なのです。
まず、国土交通省の指針として事業用トラックの初任運転者には、座学等15時間以上+実車による安全運転の実技20時間以上の特別な指導が必要です。事業者には運転者への継続的な指導・監督義務もあります。
運転以外に配送ルート、荷積み・荷卸し、積付け、伝票処理、納品先ごとのルール、駐車場所、時間指定、検品、返品対応などを覚える必要があります。BtoB配送になるほど「この店は裏口から入る」「ここは9時前に行くと怒られる」といったルールがかなりあるんですよ。
多くの運送会社で、先輩ドライバーがしばらく同乗して新人に教えるという研修形態をとっています。私の知っている運送会社さんでは、1か月もそれを行うという会社さんが少なくはないです。
ベテランなら、
「この順番で回れば早い」
「この道路は朝混む」
「この顧客はここに停める」
「この納品先はこの入口」
と知っています。
新人はそれを知りません。
逆に言えば、ルート・配送順・納品先情報・進捗をシステム側で標準化できれば、新人を使える範囲はかなり広がります。
これは人手不足対策として非常に重要なポイントです。
「経験の浅い人でもすぐ配送できるようになる」
ことは人手不足解決の一つの手段です。
もう一つ大きいのが、事故リスクです。一度大きな事故を起こせば、事業にかなりのダメージがあります。だから経営者としては、
「安い人をたくさん入れればよい」
という判断をできません。また、信用できない人を採用すると、顧客に大して失礼な態度をとってしまう、荷物を横領してしまう、横流しするという事案も聞いたことがあります。
この辺りが、飲食店などとは違うところです。
理由⑤ 運賃が上がらない
SNSやメディアなどでは
「人件費も燃料費も上がっています、値上げをお願いします、と言うだけでは?
ちゃんと価格交渉できていない運送会社が悪い。」
という方もいらっしゃいますが、問題はそんなにシンプルではありません。
荷主さんも荷主さんで、激烈な競争を生きていかねばいけません。
最終的な顧客が選ぶ時に
「うちの製品は物流費の値上げでまっとうな値上げをしているのです。」
と主張しても、わずかな金額の差でライバル会社に負けてしまうことは誰もが避けたいのです。
そこで、少しでも安い運送会社に頼みたいということになってしまいます。
そうすると、運送会社でも
「仕事がなくなったらトラックと人を遊ばせておくわけにいかない。」
と考え、結局安い価格で続けるということになってしまいます。
また、年間で運賃を決めているチャーター便などは、ガソリン代の急激な高騰などについていけないということもあるでしょう。
いかがでしたか?
どうして運送会社は人手不足で倒産してしまうのかがお判りいただけたでしょうか?興味があれば、下記の記事も参考にしてください。
また、人手不足倒産を防ぐために
「新人ドライバーの即戦力化」
「人・車が少なくても売り上げが上がる仕組みづくり」
をして人手不足を解決している実際の運送会社さんもありますので、下記の事例も参考にしてください。
※出典
「帝国データバンク「道路貨物運送業」の倒産動向(2025年度)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260409-trucking-br25fy/
「日本自動車会議所 2025年度の整備業実態調査 総整備売上高と平均年収が過去最高を更新」
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/25805/
「YOSHINOMOTORS「新春特別企画”トラックのすべてを話します”2026」
https://www.yoshino-motor.co.jp/keyman/107/
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